詩/藤月犀

2024.12.1

あらゆる曲がり角に予感があると世界の幾小節目

かの朝に知る

それは透明で未然形の隕石との衝突だった

 

神さまが鳴らす、ソプラノは

予定された調和をかき消すように

あたらしい歌をしらせる

それはそこに最初からあった奇跡で、

ぼくはその必然性に躓き

生まれたときのように泣きたくなるらしい

いまこの瞬間のためにぼくは走っていたのだと気

づいたそのままの速度で駆けていくどこまでも躓

きながら あなたを読み飛ばすいきおいで

選評/暁方ミセイ

 

 美しい詩だと感じました。感受したものと、それを書こうとする言葉が、互いに上回ろうとしながら、天を目指すような高揚感があります。

 わからない箇所がいくつかあります。予定調和は「神さま」自身によるものなのに、「神さまが鳴らす、ソプラノ」がそれがかき消すとは、どういうことなんだろう。そして予定調和はかき消されたのに、「最初からあった奇跡」の「必然性」に躓くとは、どういうことなんだろう。

 もしかすると「予定された調和」とは、「ぼく」の内面的な平和のことなのかもしれません。

 他者との出会い、とりわけ「恋」が、平和で調和したぼくを揺り動かし、駆り立てる。恋愛とは、あらかじめ人間に組み込まれたプログラムみたいなもので、それなのに胸は燃え上がり、感情が爆発する。動的なエネルギーが、生きている実感を強く与えてくる。それはもはや「あなたを読み飛ばすいきおい」だ。

 ちっぽけで、おおいなるものに振り回される、人間であるぼく。だけど、生きていることは、かくも鮮やかで。その混乱と輝きをそのまま閉じ込めたような詩です。