
占星術師・青石ひかりさんによる新連載の第2回です。ほんの少し先の未来と、日々を美しく整えるためのことばたち―。見えないものを感じる時間が、今日の自分をやさしく照らしてくれるかもしれません。天体が移動することで、私たちの行動や意識に新たな変化が訪れ、自己主張や新しい始まりが促される時代が到来するでしょう。
天体の移動
2025年の天体の移動にはいくつかのトピックがありますが、3月30日に起こった海王星の移動はかなりの影響力をもっています。天文学的に見ると海王星は太陽系の中で太陽から最も遠い惑星で、音速より速い豪風がびゅんびゅん吹いている冷たい氷の世界。太陽の光はほとんど届かず、夜空を見上げても肉眼では見つけることができません。しかしながら、占星術では太陽から遠い天体ほど「集合無意識を支配する」と定義され、冥王星と同じくらい海王星も我々の行動に大きな影響をもたらします。海王星はロマンやファンタジー、想像力、フェイク、嘘、虚妄などを象徴し、人間の精神性の深い部分を支配する天体なのです。
2012年2月から魚座を通過していた海王星は、この13年の間に地球にさまざまな善と悪をもたらしてきました。善きこととしては、魚座の専門領域である「ヴァーチャルリアル次元」が発達し、VRで異次元のアトラクションが体験できるようになったことがあります。「死なないペット」としての高価なロボットが開発されたり、ボーカロイドのアーティストが世界中を魅了したことも魚座・海王星的な事象です。それと表裏一体で、SNSによるいじめ、ネットの悪質商法、正体を明かさない者による特殊詐欺などネガティヴな出来事が起こりました。こうした「暗躍」が一気にブーム化するのも、天体の作用によるところが大きいのです。
海王星が牡羊座に移動すると、そうしたもやもやの悪は一掃されていきます。道徳性が高まり、犯罪はスピーディーに見つかり、悪行には厳しい罰則が与えられます。歴史のさまざまな「闇」に光が当たり、不公平は修正されていくのです。
公転周期約165年の「ゆっくり動く」この星が前回牡羊座にいたとき、日本では明治維新、アメリカでは南北戦争、世界各国で独立運動や公民権運動が巻き起こっていました。牡羊座は12星座のスターターなので、ここに海王星が入ると新しいはじまりを促すような出来事が多くなるのです。その「はじまり」はなんらかの「戦い」を経て実現されるのも特徴的です。
「自分の権利は自分で勝ち取ろう」という意識が高まってきますから、不公平に感じられたことに異議をとなえる人々の声は大きくなっていきます。おとぎ話には、忍耐強く助けを待ってつらい日々を送るヒロインが多いですが、王子様の登場を待つよりも、現状打破のアクションを起こしたほうが新しい時代のヒロインにふさわしい。牡羊座は短気な星座です。世界が変わるのを待つより、どうにかこうにか勇気を振り絞って、牢獄のような環境から抜け出すのが最善策です。新しい時代は、めそめそ泣いていても、誰も同情してくれません。それぞれがサバイヴすることに必死ですから、自分を駆り立てて立ち上がることが求められるのです。
そう考えると「海王星・牡羊座時代」は乱暴で無味乾燥な時代に思えるかもしれません。悲し気に見えるヒロインが報われない、救ってくれる王子様はなかなか現れない……でも、勇気ある者が幸福をつかみます。過度な犠牲精神や自己評価の低さも、トレンドから外れていくでしょう。「自分はなんて素敵なんだ!」と、とりあえず心の中で叫び続けることです。憂いのあるグレートーンが素敵に見えた過去13年から、鮮やかで元気になる綺麗カラーの時代に突入するので、生気を失った暗い表情はそれだけで運気を下げてしまいます。健康であること、個性的であること、直観的であること、そして何よりもハッピーであること。暗くて重い過去から鎖を断ち切って、光の道を行くことを海王星は応援しています。シンデレラはガラスの靴の代わりにスニーカーを履いてダッシュするのです。
青石ひかり
西洋占星術研究家。1994年から女性誌・一般誌を中心に占い連載を執筆。天体の動きと地球で起こる事象との関連について日々考察している。ELLE Japan ONTOMO WEB等で月間占いを連載中。水瓶座。
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