ちょっとその先、近美来予報 Vol.3

文/青石ひかり
絵/庄野紘子

2025.6.17

占星術師・青石ひかりさんによる連載の第3回です。ほんの少し先の未来と、日々を美しく整えるためのことばたち―。見えないものを感じる時間が、今日の自分をやさしく照らしてくれるかもしれません。土星の移動がもたらす影響は、私たちの心に新たな火を灯し、自己主張や新しいはじまりを促す時代の幕開けを告げています。

土星

占星術で扱う天体の中で、最も悩ましく、計り知れないほど意義深い星が土星です。土星は成長・忍耐・試練・災難を表し、ぱっと見は厄介で逃げたくなる性質をもっていますが、後々になって「土星にはさまざまなことを教わったな」と有難く思うことが多いのです。この星が与える影響は、樹木の枝葉を刈り落とす「剪定」にも譬えられ、成長のためにいろいろなことを取捨選択させる作用があるため、長年の腐れ縁が切れたり、依存関係が絶たれたり、やる気のない職場にぶら下がっていたら解雇された……なんてこともあります。

 

 この土星が、2025年5月25日から牡羊座に入り、2028年4月13日まで同星座に滞在します。この間に何が起こるかというと……さまざまなことが予想されます。牡羊座は12星座のスターターで最も本能的かつ闘争的な性格をもつため、土星という「ブレーキ」がかかると、その性質を吟味したり反省したりする必要が出てくるので、まさに「戦争」の意義がシビアに問われてくるでしょう。自我感覚と自己保存の本能の塊が牡羊座ですから、これを暴走させる行為(戦争も含む)には各方面から制裁が入ります。「自国ファースト」政策はどれだけ容認されるか。まさに、2025年を迎えて土星が牡羊座入りするということは、黙示録的に感じられます。

 

 逆に、エゴを主張することができない性質の人間についても、土星は「それで生きていけるのかい?」と疑問を投げかけてきます。牡羊座は主体性・能動性の星座でもありますから、受け身で生きてきた人たちは、自分の強い意志で、仕事やお金や恋人といった「獲物」を捕りにいかなくてはならなくなります。神社で恋人が現れるように願うのはスピリチュアル的ですが、土星・牡羊座時代はもっとワイルドで現実的な手段が求められるでしょう。知恵を使い、自分のセールスポイントを磨き、相手を引きつける策略が必要になります。そう。牡羊座は「戦略」を生み出すのが得意です。地図を見ながら敵の死角を探り、ベストタイミングで奇襲をかけるのです。最終的な目的は「勝つ」ことですから、衝動的に突っ込んで玉砕しても「かっこ悪いやつ」で終わってしまいます。土星・牡羊座時代には少なくとも運動神経や思考力がないと、ライバルにお宝をもっていかれる悔しさを味わうことになるでしょう。

 

 生まれたときのチャート(ネイタル・チャート)の土星が牡羊座にある人は、公転周期約29年のその星が自分のところに巡ってくることで、他の人よりさらにシビアな別離や試練が起こることになります。土星回帰=サターン・リターンと呼ばれる事象で、2025年現在28歳~31歳の人は、最初のサターン・リターン期に入っています。その上の世代、57歳~60歳の人々は人生2度目のサターン・リターンがやってきて、こちらもかなり大変。自分のキャリアの集大成を見つめる時期であり、同時に親の介護問題なども浮上してくるので、結構2度目のサターン・リターンはきついかも。ここでつまずいていろいろなことがダメにならないように、「星のさだめによって辛いことが起こっているんだ」と自覚することが心の薬になるでしょう。

 

 もうひとつ、2025年から三年間土星の影響を受けるのは、牡羊座生まれの人々です。年齢関係なく、牡羊座にとっても突然うまくいかないことが増えたり、妨害者や障害物が現れたり、孤独に追いやられたりすることが起こりやすくなります。元からマイペースな牡羊座ですが、むだな争いやわがままキャラのごり押しはやめたほうが、ダメージが少なくなり、周囲と調和して楽に生きられます。

 

 牡羊座と牡牛座は身体の部位でいうと頭部を表します。牡羊座に土星が入ってブームになるのは、恐らく女性のベリーショートではないかと私は予想します。それも、ちょっと反抗的でバンキッシュな雰囲気の、1980年代に流行ったカラフルな短髪がまたブームになったらいいなと思うのです。足元はカラフルなワーキングブーツ、反戦メッセージTシャツ、ゴシックなメイクも牡羊座・土星っぽいです。モヒカンも素敵ですが、そこまで過激でなくてもOK。2025年のパンクは、もっと軽やかで平和な姿をしているでしょう。「目立つ」だけでなく、洗練されていなければいまどきの若者は満足しないでしょう。ここから約3年かけて、人類は「戦争ってなんだろう」「競争って?」「勝つための心の構えとは?」といったことを考えていきます。頭の中に浮かぶファッション・アイコンは、デザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド(牡羊座)とシンガーの忌野清志郎さん(牡羊座)です。「牡羊座in土星」は、なかなか素敵な星のめぐり合わせです。

青石ひかり

西洋占星術研究家。1994年から女性誌・一般誌を中心に占い連載を執筆。天体の動きと地球で起こる事象との関連について日々考察している。ELLE Japan  ONTOMO WEB等で月間占いを連載中。水瓶座。

 

庄野紘子
イラストレーター。 書籍装画、文芸誌、雑誌などで絵を描いている。主なクライアントに、集英社、小学館、河出書房新社、マガジンハウス、神戸阪急など。Instagramのストーリーで日記を描くのを日々の楽しみとしている。
https://www.instagram.com/shono_illustration/