
占星術師・青石ひかりさんによる連載の第4回です。ほんの少し先の未来と、日々を美しく整えるためのことばたち―。見えないものを感じる時間が、今日の自分をやさしく照らしてくれるかもしれません。木星が蟹座に入った今、優しさと懐かしさが未来をかたちづくる力になるでしょう。
蟹座
1年単位のブームやトレンドをつくり、その星座の人にスポットライトをあてる天体は、太陽系最大の幸運星である木星(ジュピター)です。約1年かけて1星座を通過する木星は、2025年6月10日に双子座から蟹座に移動しました。次の星座に移動する2026年6月30日まで地球の「気分」をプロデュースしていく木星。人気者、ヒット商品、政治政策から芸術文化まで、「蟹座的なもの」が人々の心の琴線に触れていきますから、ビジネスや日常の人間関係に応用しない手はありません。
蟹座的なものとは、ラブリーで愛嬌のある人物、家庭的なキャラ、アットホームな雰囲気、ポップスター、レトロ家具、ホームドラマ、サロン的空間、縄のれん、アイドル、昭和歌謡などで、美意識高く洗練された世界観というよりも、親しみやすさや懐かしさを感じさせる「ほっとする」ワールドです。先日デパートの催事場をぶらついていたら、サンリオキャラクター祭りのコーナーが大盛況でした。デパートの企画室界隈でも占星術のエキスパートが顧問にいるのかも知れません。Tシャツ、タオル、マスコット、クッション、パジャマ、マグカップ、文房具……サンリオのカワイイキャラクター・グッズがあれほど集められると、何か催眠術にかかったような気持ちになるものです。思わずシナモンのミニマスコットを購入してしまった私でした。
蟹座の支配星は月で、月は「庶民」を表しているので、政界のエリートたちがあまりに訳の分からないことを押し付けてくると、庶民は蜂起します。蟹座=木星期は特権階級に対する庶民からの突き上げも多くなってくるでしょう。「芸能界のトップ」も特権階級とカウントするならば、ここに対しても「庶民的立場」からの逆襲があるかも知れません。土星や海王星の配置も加わって、古いタイプの特権的世界は危うい状況にあると言えます。
蟹座は母胎のような安全な空間も暗示しているので、自分好みの部屋でゆったりくつろぐことも、改めて「いいものだ」と商業的な提案があるでしょう。広くてひあたりのいい快適な部屋、整理整頓、ガーデニング、ホームパーティ……通勤に時間がかかっても、住み心地のいい物件に引っ越す人が増える可能性があります。実際、蟹座の人は綺麗好きで、部屋をきちんと片付けて自分好みのインテリアでまとめていることが多いのです。蟹座は土足で自分のエリアに入ってくる人を極端に嫌いますが、仲良くなると相手がどんなに遠いところに住んでいても、自分の家に呼び寄せたがります。「中間地点で待ち合わせがいいのにな……」とも思いますが、蟹座は家に来て欲しいので仕方ありません。
木星はベネフィック=よい星なので、蟹座の人にとってはおおむねラッキーな1年になるでしょう。蟹座の大谷翔平選手は今年も順調にホームランを飛ばしそうですし、蟹座の中森明菜さんも本格的な復帰が囁かれています。自分の星座に木星が入ってきたときは、種まきの年にするとよい、という定説もあり、蟹座は会社を立ち上げたり、メジャーデビューしたり、家を建てたりするのもよいのです。
スポットライトがあたる分、隠しごとなどは暴かれやすく、欠点も突かれることが多くなってきますが、これは仕方ありません。蟹座に欠点があるとしたら、持ち前の身内主義が過剰になってしまったとき、「他人」を排除する力が過剰になってしまう点。「鬼は外、福は内」になり、自分の派閥に属さない人はパージする傾向が出てきやすいのです。「家族的」なコミュニティは悪いものではないのですが、価値観の合わないものを異物として吐き出してしまうと、皆が同じ意見に凝り固まってしまうリスクが出てきます。蟹座は安心を好むので、無闇と冒険や革新を主張する人には出ていってもらいたいのが正直なところなのです。
それでも、ここから約1年は「蟹座のセオリー」が富と名声を集めやすい時間になっていきます。むずかしい表現よりも、平易でキャッチーな表現、仏頂面よりスマイル、気取った「スタイリッシュ」より、とっつきやすい「ラブリー」を武器にすること。美しさの基準も「愛嬌があること」が必須になり、自然な笑顔で親切な心を持つ女性が大切にされるでしょう。蟹座の最大の長所は「優しさ」です。レトロ、家庭的、包容力のある優しさ…とくれば、若さや遺伝的な綺麗さはそれほど重要ではなくなってくるかも。「一緒にいるとほっとする」って、実はかなりのセールスポイントですが、木星が蟹座にいる間は意識的に「ほっとするキャラ」に寄せてみるといいかも。それは「信頼できる人」ということでもあるから、無敵のビューティーになり得るのです。
青石ひかり
西洋占星術研究家。1994年から女性誌・一般誌を中心に占い連載を執筆。天体の動きと地球で起こる事象との関連について日々考察している。ELLE Japan ONTOMO WEB等で月間占いを連載中。水瓶座。
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