
占星術師・青石ひかりさんによる連載の第6回です。ほんの少し先の未来と、日々を美しく整えるためのことばたち―。見えないものを感じる時間が、今日の自分をやさしく照らしてくれるかもしれません。新しい時代のはじまりは、いつも静かではありません。2025年、星々は私たちに「強さとは何か」を問いかけながら、感情と美意識のバランスを探る旅へと誘うでしょう。
天体移動による地上の「変化」
2025年に入ってから、いろいろなことの潮目が変わってきたな……と思います。星の見立てとしては、よりハッピーに、より楽観的に、かつ軽やかに生きられる時代が来るはずだったのに、自分やまわりの様子を見ているとなんだかそうでもない。「風の時代がやってきて、私たちイイ感じよ!」といろいろなところでつぶやいてきた占星術師としては、なんとも居場所がない感じです。確かに2025年は新時代の幕開けで、3月に海王星が、5月に土星がともに牡羊座に移動し、7月上旬には天王星が双子座に入りました。なかなか星座間を移動しない天体が短期間に動いたわけです。カーブを描いて変化が訪れるというより、いきなり垂直方向にガタッと高度が変わったような衝撃がありました。
今までは海王星も土星も天王星も、おだやかで受動的な性質をもつ「女性星座」に分類される星座に滞在していましたから、それまでなじんでいた流れというものに対して、安心して身を任せていればよかったのですが、それらが全部、能動的な性質をもつ「男性星座」にシフトしたため、急に戦国時代に入ったような感があります。
牡羊座という星座はタフでワイルドで「戦って生き残る」ということがポリシーとしてありますから、ここに海王星というふんわりした天体が入ったことで、「ぼんやり夢を夢で終わらせず、闘って勝ち取る!」といった気運が出てきたように思います。時間差で土星も牡羊座に入り、土星は成長の星ですから「勇気を出して闘って強くなれ!」と言われている状態です。海王星も土星もそれまでは魚座にいて、魚座は同情心にあつい星座であるため、ゆずりあい、助けあいの心で保たれていたのが、急に「ひとりで歩け!」と言われてしまったようなものです。
さらに7月7日以降、いろいろなところで悲鳴を上げている人が多いです。かくいう私も、「寝耳に水なんですけど!?」というショックな出来事が続き、この夏は心身ともに「酷暑」となり、こうして今息をして生きているのが不思議なほどです(笑)。天王星はショッキングな星。急なチャンスも舞い込めば、その逆もあるということなのでしょう。なんだかこうも星の影響がストレートだと、少し前の時代が懐かしくなってしまいます。
2025年前半に星が与えてくれた教訓は「何度でも立ち上がれ!」ということです。この流れがやってくる直前は、芸能・TVの世界を中心にさまざまなハラスメントが告発され、コンプライアンスの基準が更新されてきました。時代に合わない特権主義はアウトになり、弱者とされてきた存在には訴える権利が与えられたわけですが、ここからはより積極的に非合理なものと対決していく流れになります。いじめられたらやり返せ、という単純なものとも違いますし、究極的に何が正しいのかはまだわかりません。ともかく、弱いことを嘆いているばかりでは生きていけないシビアな時代になった。すべての人間にとって、「自分を守り、勇気をもち、生き残る術を探す」時代になったと思います。
鉄を打つがごとく人類を鍛えはじめた天体たちは、今現在、続々と逆行していて(占星術は天動説をもとにしているため、天体の逆行という現象が起こります)、土星は9月1日には牡羊座から魚座に、海王星は10月22日に同じく牡羊座から魚座に、天王星は11月8日に双子座から牡牛座に戻ります。2025年の後半は男性星座に移動した天体たちが女性星座に戻るわけです。2026年には順を追って、それらの天体は再び男性星座に進んでいきます。そこで人類が学ぶのは、「物事の陰陽の絶妙さ」であったり「男性性と女性性のバランス」であったりするのでしょう。強く生きよ、と言われても、ただ闘いに勝てばよいというものではない。美意識や道徳心、他人を思いやる心がないと意味がないのです。
昭和100年、戦後80年に当たる2025年、女性は今またダイナミックな美のジャンプをおこなうタイミングにあります。予測不可能なボールが飛んできても「ハンサムな返し」をして相手を驚かせてしまおう! 凹まず明るく柔軟に生きる戦略を、美の観点から考えたい時間が、今という時間なのです。
青石ひかり
西洋占星術研究家。1994年から女性誌・一般誌を中心に占い連載を執筆。天体の動きと地球で起こる事象との関連について日々考察している。ELLE Japan ONTOMO WEB等で月間占いを連載中。水瓶座。
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