ちょっとその先、近美来予報 Vol.8(最終回)

文/青石ひかり
絵/庄野紘子

2025.12.24

占星術師・青石ひかりさんによる連載の最終回です。ほんの少し先の未来と、日々を美しく整えるためのことばたち―。見えないものを感じる時間が、今日の自分をやさしく照らしてくれるかもしれません。2026年は、新しい風が世界を包む年。変化の波に乗りながら、自分らしさを大切にして進んでいきましょう。スピード感ある時代だからこそ、心はしなやかに。あなたの選ぶ一歩が未来を彩りますように。

びっくり仰天のターニングポイント

2026年は人類全体が変わっていく年?

2026年はどんな年になる? この季節になると占い師たちは皆、このテーマで原稿を書くことが多くなります。一年のトレンドを元旦のチャートから読むことも出来ますが、いわゆる「宇宙元旦」と呼ばれる「春分の日」にフォーカスして分析することもメジャーな手法です。2026年の春分の日は3月20日。日本では厳密には21日の0時頃になりますが、この日の星の配置はとても特徴的です。もともと春分の日とは太陽が牡羊座に入る日で、2026年は太陽(牡羊座0度)と海王星(牡羊座1度)がほぼ重なり、わずかの差で土星(牡羊座4度)も重なり、月、金星も牡羊座にあるという「占星術で扱う10の天体のうち半分が牡羊座にある」珍しい星並びなのです。

 

動きの遅い海王星(公転周期約165年)や、土星(公転周期約30年)が、太陽とほぼピッタリ重なった日が「宇宙の元旦」というのもレアだし、今まで魚座にいたそれらの天体が牡羊座に全部移動する、というのも特別な意味があります。12星座のラストの星座である魚座で宇宙のサイクルは一巡し、過去の記憶を失った状態で牡羊座の季節を迎えます。星も、赤ちゃんのように「おぎゃー」と生まれかわるわけです。

 

牡羊座の基本特性を述べると、自我感覚が強く、楽観的で楽しいことを好み、害を及ぼす外敵とは即闘って自己保存を行う非常に野性的な星座です。この地上に生まれてきて、「生きていく」ために最もベーシックな能力が発達し、「内と外」の感覚がとてもハッキリしている。矢尻や斧で戦っていた原始人の心を忘れず、支配星は軍神マルスの星・火星。牡羊座の人はしばしば好戦的で競争心が強いと言われることもありますが、うまれたばかりの魂がこの過酷な地球で生きていくための基本的な力を授けられた星座なので、根っこには純粋な「生きていたい」という欲求があります。それは実にピュアなものです。

 

太陽・海王星・土星が同じ星座に固まった日が宇宙元旦であるとはどういうことか。世の中全体に戦いを好む風潮が広がり、「敵か・味方か」を分けて考えることが慣習的となり、ヒトの原始的本能であるエゴ(広い意味での)が肯定されるということです。太陽と海王星の接近は、戦隊ヒーローものや戦国武士を主役にした映画やドラマのヒットを予感させます。勇敢な人、強い人、闘って最後に勝利を得る「英雄」が人気者になります。

 

土星や海王星が魚座にいたときは、譲歩や自己犠牲の精神が尊ばれました。スピリチュアルなものも人気で、人々はパワースポットや占いに夢中になりました。なんといっても海王星は2012年からずっと魚座にいたので、その空気感たるや劇的にチェンジしています。

 

牡羊座はスピーディーで短気。敵が襲ってきたら神社で祈る前に「即・闘う」ことになるでしょう。この前触れ的な出来事として象徴的だったのは、2025年に日本各地で大量に目撃されたクマです。食べ物を求めて人里に下りてきたクマは、即麻酔銃で捕獲され、安全保護のため「処分」されました。「クマだって生きている」という思いから山に戻しても、また下りてきてトラブルが起こるわけですから、「みんな生きている」といったこれまでの魚座的な理想主義では解決が難しい現実があります。敵がクマになり、隣人がクマになる……極端なことを言うと、そんな年になる可能性も十分にあるわけです。

 

フランス革命のようなことが起こるかもしれません。2025年はお米が高くて生活が苦しくても、みんなある程度我慢してきました。牡羊座の自己保存と戦闘精神が刺激されると、ストレスは外に表現せざるを得なくなり、各地でいろいろなデモが起こることが予想されます。

 

それでも、2026年6月30日までは蟹座という穏やかで共同体を大切にする星座に幸運星・木星がいますから、ある程度の自制はきくかも知れません。木星が獅子座に入ると、獅子座も牡羊座に負けないくらい自我が強い星座ですから、比喩的には「火の嵐」のような世界になります。木星から冥王星まで、火の星座と風の星座のみに天体が入るという、過去200年経験したことのない時代になるので、古い時代を「あの頃はよかった」と懐かしんでいる余裕もなくなってきそうです。

 

ここまで読んでいただいて「星占いは未来を読むことで、怖がらせることではない」ということを思い出します。どうか怖がらないでください。世の中の気分やさまざまなルールは変わっていきますが、人間の魂は不変です。「ハードな時代だからこそ、優しくありたい」「みんながエゴを追求するのなら、わたしはおおやけの幸せを考えたい」と思うのが、正常な、この先にあってしかるべき人間の精神だと思います。大変なときほど、人の本性が出ます。「あの人は真にビューティフルな人だった」と思ってもらえる振る舞いが出来るのは、実はみんなが戦々恐々としている、こんな時代なのではないかと考えるのです。景色が殺伐としていればいるほど、「花のように咲いている」ビューティーな精神の人はいつも以上に際立つのです。

 

2026年は人類全体が鈍行列車から、特急列車に乗り換えていくような気配がありますが、大きな流れを受け止めながらも、ブレずに生きてみてほしい。「自分がこの世にいることの意味って何だろう」という、深い深いことも考えてみるといいと思います。「みんなが一緒だから安心して、この道を選んで生きてきた」という人にとっては、本当の自分と出会う少し手厳しい年でもあります。集団に染まらない、個人の時代の幕開けの年です。

青石ひかり

西洋占星術研究家。1994年から女性誌・一般誌を中心に占い連載を執筆。天体の動きと地球で起こる事象との関連について日々考察している。ELLE Japan  ONTOMO WEB等で月間占いを連載中。水瓶座。

 

庄野紘子
イラストレーター。 書籍装画、文芸誌、雑誌などで絵を描いている。主なクライアントに、集英社、小学館、河出書房新社、マガジンハウス、神戸阪急など。Instagramのストーリーで日記を描くのを日々の楽しみとしている。
https://www.instagram.com/shono_illustration/